永添です。
なぜ私が提訴されたのか。まず、私は匿名ではなく、実名アカウントであり、珍しい名字(夫の父が大分県出身で、出身地にある地名から来た名字)なので、裁判所に開示請求しなくても個人が特定できることや、私がインフルエンサーでもなんでもない、無名の、肩書きも何もない一般人の女であることから選ばれたのではないかと想像しています。匿名だったら開示請求をするなど手数が余計にかかりますから。
私に訴状が送られて来たのは、伊藤さんが山口氏にレイプされた被害の損害賠償の民事訴訟の控訴審の判決言い渡しの期日2022年1月25日の1ヶ月前でした。東京地裁の一審の判決で、伊藤さんの受けた被害の主張は全面的に認められ、控訴審でも伊藤さん側の証人の陳述が加わった以外に、山口氏は、伊藤さんの一審判決で認められた主張を覆すような証拠を提出することはできず、敗訴はほぼ確定している状況でした。そんな時に、どこにでもいる私のような一投稿者を名指しで名誉毀損で提訴する理由があるとしたら、この後に及んでもまだ伊藤さんを嘘つき呼ばわりし、「自分は法を犯すようなことをしていない、レイプしたというのは名誉毀損だ。」、という誰も信じない主張を、まだ議論の余地があるように思わせるために、自分を批判する投稿をする人たちのTwitter投稿を牽制したいのだろうと思いました。
伊藤さんの書かれた「Black box」や、伊藤さんがインタビューに答えたりしたことで、自分は社会的に殺されたと、1億3千万円もの反訴をしましたが、一審で棄却され、「Black box」には、性犯罪被害者をめぐる日本の状況を広く議論するための公益的な作品で、プライバシー侵害や名誉毀損にあたらない、と判断されたことはとても良かったと思いますし、すでに中国、台湾、韓国、フランス、スウェーデン、英語でも翻訳されて、日本国内でもあらゆる自治体の図書館に所蔵され、世界中でも広く読まれ、「安倍総理と親しい著名なジャーナリストから受けたレイプ被害を実名で告発した勇気ある女性」、として伊藤さんはとても尊敬されています。私には、伊藤さんと同じ年齢の息子がおり、東日本大震災の起きた年に就活をしたので、非常に苦戦し、50社以上回ってやっと就職できたのですが、女の子の友達の一人は、とうとう卒業までに就職できませんでした。もしも私の子が女の子だったら、伊藤さんと同じような被害にあったかもしれないと思うと、恐ろしく、実際、伊藤さんの民事裁判を支える会の報告集会と、傍聴の抽選に並んでいた時偶然近くにいて出会った女性は、「私の娘が伊藤さんと同級生なの」と言っていました。今は伊藤さんと同じ歳の息子には1歳の娘がいて、孫娘のことを思うと、この子が性犯罪に怯えなくて済むような社会に日本を変えていきたいと、さらに強く思うようになりました。
私の投稿が名誉毀損で提訴されるなら、Amazonの「Black box」のブックレビューの多くも、名誉毀損にあたることになるでしょう。本を読んで、自由に自分の感想や意見をブックレビューに書くことも、犯罪や裁判についての記事を読んだ感想や自分の意見をTwitterに投稿することも自由にできなくなるということだと思います。
私は嘘を書いたり、名誉を毀損するようなことを投稿したとは思っていません。2月7日から始まる裁判で、正々堂々とそれを明らかにしたいと思います。お金もない一般人の表現の自由を、権力に近い経済的に圧倒的な余裕のある人物が、訴訟で脅して口を塞ぐようなスラップ訴訟が、簡単にできないような法改正も望みます。